「ジーンくん、……亜鉛 の サプリ

「ジーンくん、……だったかしら?」
マカ と はええ」
 ステラはジーンの真剣な眼差しに苦笑を返す。
「酷いdha epa dha誤解だわ。わたしはただ、この子を助けたいだけなの」
「そのために、それはいけないことだと諭す自らの妹に手をかけると? ステラさん、貴方は……」
 ジーンは醜いものでも見るように顔を歪めた。
「狂っている」
ゴーヤ「酷いわ、ジーンくん」
 ステラはその強い言葉に傷ついたように目を伏せる。
「この間会った時は褒めてくれたじゃない。とても可愛いって、綺麗だって」
 思わずミモザが白けた目でジーンを見上げると、彼は誤魔化すようにごほんごほんと大げさに咳をした。
「あ、あの時はそう思ったんです。ですが、貴方の行動は度が過ぎている」
 そう言って強く否定するように首を横に振るマカ
「物事には限度がある。貴方はもう少し自分のことを客観的にかえりみるべきだ」
「……貴方は、ミモザの味方なのかしら」
 ぽつりとステラはこぼした。その口調はひどく寂しげで、そしてとても禍々しい。
「どちらの味方とか、そういう問題ではありませんよ」
 呆れたようにジーンはため息をついた。
「どちらの意見に正当性があるか、これはそういう話です」
「王都に来てから……、なんだかおかしいわ」
 ジーンの言葉が聞こえていないかのように、ぽつりぽつりとステラはこぼす。
「村ではみんなわたしの意見を聞いてくれた。わたしは優秀だって、優しいっ亜鉛 の サプリて、正しいって言ってくれたのに」
 ステラの表情は変わらない。涼しい表情のまま、唇にはわずかに笑みすら浮かんでいるというのに、その瞳だけがぽっかりと穴が空いたかのように薄暗かった。
「貴方はわたしよりもミモザが好きなの?」
「………。どちらが好きかで言ったら、まぁ、貴方のことは好ましくありませんね」
 ステラの瞳孔がショックを受けたように収縮する。そして一度ゆっくりと瞬きをした。
「邪魔をしないで」
「したくてしてるわけじゃないんですけど、ねっ」
 ステラから氷の破片が放たれたのを、ジーンは土壁を作ることで受け止めた。そのままその土壁は蛇のようにぐんっとうねると、一気に伸びてステラへと突進する。ステラはそれを避けたが、土壁はどこまでも追跡を続けたdha
「……くっ」
 ステラは氷の破片を放って土壁を凍らせることでその動きを止める。しかしその時にはもう、ジーンはステラの逃げるルートを読んで土壁と挟み込むようにその背後へと回り込んでいた。
「……っ」
 切り付けられた刃をステラはなんとかレイピアで受け止めたがその切先は耳障りな音を立てて滑り、ステラの頬を掠める。
 彼女の血が宙を舞った。
(すごい)
 ジーンのことである。魔力が多いことは知っていた。しかしあれだけの量の土を動かし、なおかつそのスピードもコントロールも落とさないというのはかなりの熟練の技だ。事実ステラもミモザも攻撃は直線的で、相手を追尾するなど困難である。
 それに剣術においてもジーンに一日の長があるのだろう。そもそもステラの武器であるレイピアは斬り合いをするようには出来ていない。接近を許し切り結んでしまった時点でステラは圧倒的に不利である。
「もうやめませんか。今ならばまだ貴方の行為は未遂だ。クロム貴方が大人しく手を引くというのなら、僕は何もしませんよ」
「わたしが悪いことをしているみたいに言うのをやめて……っ!!」
 ステラが激情したように叫ぶ。その強さにジーンは呆気に取られたように動きを止めた。
 その隙を突いてステラが氷の破片を生成する。
「危ないっ!!」
 ミモザは素早く駆けるとジーンに飛びついた。
「ぐぅ……っ!」
 氷の破片が、すんでのところで飛び込んだミモザの足を貫く。そのまま2人はごろごろと地面を転がった。
「ミモザさん!」
「………っ」
 地面には2人が転がった軌道をなぞるようにそれなりの量の血が広がった。それに気づいたジーンが声を上げるが、ミモザはすぐに起き上がると油断なくメイスを構える。ジーンもその視線を追うようにして彼女のことを見た。
 彼女ーー、ステラのことを。
 ステラは無言で佇んでいた。いつもは華やかな笑みを浮かべる口元は無感情に閉じられ、明るい輝きを宿す瞳は昏くよどんでいた。彼女はレイピアをひたりとミモザへと向ける。
「わたしの邪魔をしないで」
 ぞくり、と身を震わせる。アントシアニンの効果ミモザは自分の死を覚悟した。
「もうやめて!」
 唐突に、悲鳴のような声がその空気を引き裂いた。
 その声にステラが夢から覚めたように顔をあげる。振り返った視線の先では、少女が頭を抱えるようにしてうずくまり、泣きじゃくっていた。
「もう、やめて。ごめんなさい、ごめんなさい、わたしが悪かったです、ごめんなさい」
 嗚咽を漏らしながら、彼女は言葉を紡ぐ。
「こんなことになるなんて思わなかったの、こんな、怪我する人が出るほどのことだなんて……」
「貴方は気にしなくて良いのよ?」
 ステラがゆっくりと彼女に近づく。少女はそれに怯えたように身を引くと、拒絶するように首を振った。
「ごめんなさい! わたしが間違ってました。ごめんなさい、ごめんなさい……っ」
「君たち、一体何をしているんだい?」
 その時落ち着いた男性の声が響いた。見上げるとそこには教会騎士団の制服を着た若い男性が立っていた。彼は訝しげに身を震わせて謝罪を繰り返す少女と血を流すミモザ、それを支えるようにするジーン、そして立ち尽くすステラを見る。
 周囲を見渡すと塔に入るために行列を作っていた人々が伺うようにこちらを見ていた。
(そりゃそうだ……)
 いかに距離を取った場所でのやりとりだったとはいえ、あれだけdha epa dha派手にやり合えば人目につくに決まっている。心配した人々が騎士に報告したのだろう。
「とりあえず……、そっちの子は手当をしようか。あと全員話を聞かせてもらうから、詰め所まで来てもらうよ」
 彼は冷静にそう告げた。
亜鉛の効果dha epadha

 さて、第一王子アdha epa

 さて、第一王子アズレン・アルタイル・アゼリアはステラの攻略対象のうちdha epa dhaの1人である。
 ただし、『バッドエンドの扱亜鉛 サプリいの』という注釈がつく。
 これには三つ理由がある。
 一つ目はこのアズレン王子が『誰も攻略できなかった際に救済措置』として結ばれる相手だからである。実はこのアズレン王子、ゲーム中に仲を深めるようなイベントは亜鉛 サプリ存在せず、お話の中にちょこちょこ登場する脇キャラである。通常の乙女ゲームでは条件を満たせず誰も攻略できなかった場合は誰とも結ばれないエンドが存在したりするが、このゲームではその際にお情けとしてこのアズレン王子と結ばれるのだ。つまり何もせずにだらだらしていると結ばれるお相手ということである。
 二つ目はこのアズレン王子、婚約者がいてそのお相手が正妃に内定している。つまりステゴーヤラは側妃として迎えられるのである。これは両思いを目指すプレイヤーとしては気に入らないだろう。
 そして三つ目、これはーー
 音楽とともに2人の人物が入場してきた。1人は細身の女性である。紫がかった銀髪を緩やかに結い上げ深い翡翠色の垂れ目をした、たおやかな女性である。彼女は群青色の美しいドレスを身に纏い、物静かな風情で立っていた。
 そしてその隣には金髪碧眼のマッチョがいた。
「ふんっ!」
 おもむろにそのマッチョがマッスルポーズを取ると胸元のボタンがブチィッと音を立てて弾け飛ぶ。見事な大ゴーヤ胸筋が露出した。
 健康的に日焼けした肌は何かのオイルを塗っているのかテカテカしている。
「皆の衆、本日はよくぞ集まってくれた!」
 マッチョは別のマッスルポーズへと姿勢を変えた。
「今日ここで!私はエスメラルダを婚約者とすることを皆に誓おう!!」
 その満面の笑みを浮かべる口で、白い歯がきらりと光る。
 しばらく会場のみんなは沈黙した。その後我に返ると自分達の役割を思い出し、盛大な拍手をした。
「ありがとう、ありがとう」
 にこにことマッチョこと、アズレン王子が手を振る。
 ーーこれが三つ目の理由。王子は筋肉キャラだった。
 今日って王子の婚約披露宴だったのか、とミモザはやっと状況を理解した。

 ホールには穏やかな音楽が流れていた。皆それぞれ歓談したり、食事や飲み物を口に運んだクロムりとその場の空気を楽しんでいる。
 王子達へと挨拶は一組ずつ呼ばれて行うらしく、ガブリエルは「呼ばれたから行くわ」とオルタンシア教皇が呼ばれたタイミングでいなくなってしまった。
 ぼんやりと眺めているとこちらに駆け寄ってきた若い使用人が「次です」と囁いて王子の元へと先導するように歩き始めた。
 当たり前のようにレオンハルトが腕を差し出すので若干「僕も行くのか……」と内心思いつつその腕に手を添えてミモザも歩いて着いていく。
 隣を歩くその顔を横目でちらりと見上げると、一応その表情は穏やかな笑みを浮かべていたが、目が死んでいた。
(……苦手なんだろうなぁ)
 その表情を見て悟る。基本的にはローテンションな人だ。あのようにハイテンションな人は不得手なのだろう。ちなみにミモザは人付き合い全体が不得手だが、ハイテンションな人は嫌いではない。
 というよりはあの立派な筋肉が気になる。
(どうやってゴーヤ チャンプルーあそこまで育てたんだろう……)
 ぜひ教えてもらいたいものだ、と思うがそんな不敬は許されないだろう。
「おお!よく来たな!レオンハルト!!」
 あれこれと考えていると、まだその目前まで辿り着いていないのに馬鹿でかい声が鼓膜を叩いた。
「お前の顔が見れて私は嬉しいぞ!!」
「……俺もです。殿下」
 距離にして5mはありそうな遠くから叫ばれてレオンハルトは一瞬嫌そうにしながらもすぐに笑みを取り繕い、足早にその目の前へと馳せ参じる。
 そのまま騎士の礼を取るのに、ミモザも慌てて真似しようとして思いとどまった。
(危ないっ)
 今はドレスを着ているのだと思い出し、すんでのところで淑女らしくカーテシーをして見せた。
 レオンハルトの付けてくれた教師は淑女としての作法も色々と教えてくれたが、所詮は付け焼き刃、油断するとうっかり忘れてしまう。
 こっそり冷や汗をかいていると「おお!」と頭上から歓声が聞こえた。
「それが噂の弟子か!!くるしゅうない!面をあげよ!!」
「はっ」
 レオンハルトが顔を上げるのに合わせてミモザも上げる。目の前で見る筋肉の塊はなかなかに迫力があった。身長こゴーヤそレオンハルトの方が高いものの、筋骨隆々と盛り上がったその体躯はその肉感ゆえに圧迫感がすごい。心なしか彼の周辺だけ温度が2、3度高い気もする。
 思わずまじまじと見つめてしまうミモザに、彼はその無礼を咎めることなくにこりと笑った。
「私に何か気になるところがあるか?」
「筋肉が……」
「うん?」
「とても美しいと思いまして」
 彼はぽかんとした後、弾けるように笑い声を上げた。
「そうか!!そういった感想はなかなか稀だ!」
「殿下、笑いすぎです」
 側で控えていたスキンヘッドにサンタひげをした男性が静かに首を横に振って言う。彼は宰相のオーティスだと先ほどガブリエルが教えてくれていた。その淡い水色の瞳は呆れている。
「名は何と言う」
 宰相を無視して続けられた言葉にミモザは慌てる。そういえば名乗るのもまだであった。
「失礼致しました。レオンハルト様の弟子のミモザと申します」
「うむ!ミモザか!!先ほどはなかなかの余興であった!!」
「は?余興……?」
 溌剌とよくわからないことを褒めるアズレンに、レオンハルトは渋い表情で「やはりあれは殿下の差し金でしたか」と告げた。
「あれ?」
「先ほど君のことを睨んでいる女性がいただろう」
 レオンハルトの言葉にああ、と思い出す。確かに2人ほど目についた。彼女達がアイリーンとセレーナという名の伯爵令嬢なのだと、やはりガブリエルがdha epa教えてくれたのは記憶に新しい。
「あの2人は犬猿の仲で有名でな。余程のことがない限りは2人そろって同じパーティーに呼ばれることはない。わざと呼んだんだ、ここにいるアズレン殿下が」
 思わずアズレン殿下の顔を見ると彼はにやりと笑った。
「あの2人はレオンハルトを取り合っていつも派手な喧嘩を繰り広げているのだ」
 その言葉にミモザはレオンハルトの顔を見る。彼は眉間に皺を寄せたまま黙っている。
「悪趣味ですよ、殿下」
 代わりに宰相がぼそりと苦言を呈した。
「いやぁ、見事な流れであった!2人の喧嘩からのミモザ嬢の登場!!まるでよく出来た喜劇だ!いやいやあそこまで真に迫った表情は劇場では見られんな!」
「殿下」
 咎める宰相に王子は「いいではないか!」と呵呵と笑った。
「我々王族は国民を守るための防衛システムのようなものだが、多少臣下をからかうくらいは許してもらわねばな!政務をする気もなくなるというものだ!!」
「不謹慎です」
 宰相は渋面だ。
「いやしかしミモザ嬢。貴方もなかなか良い筋肉だ。普段はどのようなトレーニングを?」
 気まぐれな気性の持ち主なのか、彼は唐突に話題を変えた。見事なマッスルボディの持ち主にふいに筋肉を褒められて、ミモザは思わずぱっと頬に朱を散らす。
「え、えっと、殿下のトレーニングには敵わないかと思われますが、一応筋トレは一通り……」
 もじもじと告げる。
「なるほど、いやしかし実用的な筋肉だ。トレーニングだけではあるまい」
「えっと、そのう、鈍器を少々振り回す程度でしょうか」
「鈍器!素晴らしい!私サプリメント マカはよくバトルアックスを振り回しているぞ!!」
「素敵です」
 ミモザは大真面目に頷いた。2人の間には筋肉をとおして通じ合う、信頼に似たなんらかの感情が生まれつつあった。
「のう」
 しかし思わず握手をしかけた2人の間にずずい、と割り込む声がする。そちらを見ると婚約者であるエスメラルダがミモザをじっとりと睨んでいた。
「のう、そち、今のは聞き間違いかの」
 彼女はゆっくりと数歩前に出ると威圧するようにミモザに顔を近づける。
「わらわの勘違いでなければ、今そなたはわらわの将来の夫をたぶらかしたかの?」
 氷のような視線である。ミモザは震え上がった。
「め、めっそうもないです!」
「ほう?ではどういうつもりじゃ」
「そ、その、素晴らしい筋肉の持ち主なので、憧れと申しますか……」
 その返答に彼女はその整った眉根を寄せた。
「むぅ、まさかこのような変態筋肉だるまに興味のあるおなごがおるとは……、盲点じゃった」
「今変態筋肉だるまって言いました?」
 宰相が尋ねるがそれは無視された。
「まさかそなた、我が将来の夫が好みだなどと申すまいな」
 ミモザはぶんぶんと首を横に振る。しかし彼女は納得できないらしい。そのままぐいぐいとミモザに詰め寄る。
「では、どのようなおのこが好みじゃ。もうしてみぃ!」
「え、えーと、」
 ぐるぐると思考が空転する。結果、一番最初にに思い浮かんだ相手は、
「れ、レオン様です!」
 だった。
 エスメラルダはむぅ、と唸ると「我が将来の夫とはまるで違うようじゃな」と頷いた。
「ではまぁ、許してやろう」
「あ、ありがとうございます」
「しかしゆめゆめ忘れるでないぞ。我が将来の夫に手を出してみよ」
 彼女は夫の隣へとゆっくり戻るとミモザを見下ろして胸を張った。
「そなたのことは、ほっぺたをぐりぐりする刑に処す」亜鉛 サプリ おすすめ
「は、はぁ」
 思ったより可愛らしい刑だ。
「焼けた鉄での」
「絶対に手を出しません!!」
 前言撤回、えげつない刑だった。
「はっはっはっ!すまんな、ミモザ嬢。我が将来の妻は少々嫉妬深いのだ!!」
 すすす、と彼女は殿下に近づくとそのまま彼の肩へとしなだれかかった。
「そなたがわらわにつれないのが悪いのではないか」
 その顔は恋する乙女そのものだ。
「よしよし!可愛いやつめ!はっはっはっ!」
 快活にそう言い放った後、アズレンは面白がるようにミモザとレオンハルトを見てにやりと笑った。
「しかしまぁ、おかげでめずらしい奴の面白い顔が見れた。感謝するぞ、ミモザ嬢」
「面白い顔?」
 首を傾げるミモザの横で、最初に話して以降はずっと無言で佇んでいたレオンハルトは誤魔化すように咳払いをした。
マカ と はマカ亜鉛マカ と は

 木陰からその手はクロムの効能

 木陰からその手は伸びていた。大ゴーヤきくふしだった男の指先が『それ』とミモザの手にするモーニアントシアニンングスターメイス、チロのことを示す。
 チロからは黒い塵のような魔力のオーラが漏れ出ていた。
 慌てて背中にチロのことを隠すが、男のセリフからも、もう遅いのは明白だ。
 声とともに影から姿を現したのは引き締まった体に教会に属する精霊騎士であることを示す白サプリメント マカい軍服を身にまとった美丈夫だった。
 夜空のように深い藍色の髪は豊かに脈打ちリボンで一つに束ねられて背中を流れ、その長い前髪で右目は隠されているものの黄金色の左目がこちらを眼光鋭く見据えていた。
 彼の背後にはミモザの背丈ほどもある翼の生えた大きな黄金の獅子が同じくこちらを睥睨している。
 その王者然とした堂々たる体躯の男にミモザは見覚えがあった。
(嘘だろ)
 心中でうめく。
 彼のマカ と は名はレオンハルト。
 いじめっ子のアベルの腹違いの兄であり、この国最強の精霊騎士である『聖騎士』の称号を冠する最強の男であった。

 『狂化個体』は取り締まりの対象である。
 その多くは欲望に理性を飲まれてしまい何をするかわからないからだ。
 実際、ゲームの中のミモザとチロも最初はささやかな嫌がらせをする程度だったのが段々とヒートアップしていき、最後の方はかなり直接的に主人公達に危害を加えようとしていた。
 ミモザは後退る。
「いや、これは……っ」
 なんとか言い訳を捻り出し逃げ道を探そうとしdha epaて、不意にその体が発火するような熱につつまれ、息が詰まって二の句が告げなくなった。
「……はっ」
 呼吸が荒くなる。動悸がする。
 一瞬レオンハルトが何かをしたのかと疑ったが、すぐに違うことに気がついた。
「チゥーー」
 チロが低く唸る。
 チロが身に纏った黒い塵のようなオーラが、チロを握る手を伝い、ミモザの身体も飲み込もうとしていた。
「……あっ、」
 体が勝手に臨戦態勢をとる。チロに引っ張られるようにその切先をレオンハルトへと向けた。
 彼にもミモザの状況がわかったのだろう。側に控えていた黄金の翼獅子に手をのばし、その姿を身の丈ほどの見事な刃ぶりの剣へと変じさせる。
(待て……っ!)
 心で命じるのに体が言うことを聞かない。いや、違う、あれは敵だ。
 自分達を拘束しに来た敵だ、と頭が警鐘ゴーヤを鳴らす。
「チチッ」 
 バレたからには殺すしかない、とチロが囁いた。
亜鉛 の サプリ亜鉛 サプリ

 天高く掲げられdha epa

 天高く掲げられたレイピアが振り下ろされる。
(まずい……っ)
 ミモザはとっさにゴーヤ防御形態を構えた。間一髪、その亜鉛 サプリレイピアから放たれた光の帯がチロの盾へとぶつかり爆ぜる。
「ぐ……っ!」
 その攻撃の重さにうめく。彼女の最強の魔法、光線銃(レーザービーム)だ。
 この魔法は主人公であるステラの必殺技であり、MPの消費量と溜め時間の長さによって威力のdha epa dha上がる技である。ゲーム中の戦闘場面で使うものは威力が少なかったが、ボス戦などのイベントでとどめを刺すモーションの際のアニメーションで使用される時の威力はとんでもなかった。だいたいは仲間の男性勢がステラが溜める時間を稼ぎ、技を放つ、といったパターンだ。それはそれは巨大な精霊の胴体に風穴を開けるぐらいとんでもなかった。普通にミモザが食らったら死ぬしゴーヤ卒業試合なんかで出していいものではない。
(う、撃ちやがった……)
 ミモザが防げなかったらどうしていたのだろう。きっと今頃スプラッタな光景が校庭には広がっていたはずだ。まぁそれを言ったら卒業試合そのものが物騒極まりないが、しかし使われる技の多くは寸止めが可能であるかあたっても死なない程度のものに配慮されている。
 ちらり、とミモザが審判の教師を見ると彼はちょっと顔を引き攣らせて引いていた。引くくらいならば止めて欲しい、切実に。
 正直、王都の御前試合ならともかく、今回の試合では出てこないと思っていた技だ。
(これゴーヤは早々に片をつけないとダメだ)
 じゃないと死んでしまう、ミモザが。
「すごいわミモザ。簡単に防げてしまうのね」
 周囲に花を飛ばして無邪気に笑う姉に、ミモザはぞぞっと身を震わせた。ミモザがうっかり死んでしまっても「あら死んじゃったわ、ごめんなさい」で済まされてしまいそうな恐怖を感じる。
(さすがにそんなことはない……、よね?)
 チロはそんなことあるだろボケェ、とメイスの姿のまま身を震わせてミモザに訴えてきた。
 ふぅ、と自分を落ち着かせるように息を吐く。そしてその深い湖面のような瞳で、ミモザは冷静にステラのことを見据えた。
 ミモザに勝機があるとすれば、それは一つだけだ。
 それはーー、
「筋肉こそ!最強!!」
 気合いと共に一気に距離をつめる。氷の破片がアントシアニン襲ってくるが、それを避けることはせず、全てメイスで叩き壊した。長距離戦では勝ち目がない。勝つためにはなんとか近距離戦に持ち込まねばならない。ステラもミモザの狙いを悟ったのか氷を放ちながら距離を取ろうと動くが、遅い。ミモザはずっと鍛えてきたのだ。
 筋トレを欠かさず行ってきた。走り込みだって毎日続けている。そして戦闘経験ならば圧倒的に積んでいる。その分の筋力が、速度が、判断力が、ミモザにはある。
 ミモザはそのまま懐へと飛び込むと、メイスでレイピアを殴りつけた。ただでさえ重量級の武器である。遠心力で勢いがついているし、なによりも、
「筋トレの成果を見よ!」
 ステラよりもミモザのほうがマッチョである。
 ステラが防御形態を展開しようとするが、もう遅い。
 ミモザはステラのレイピアを殴り飛ばした。
「……いっ!」
「筋肉の、勝ちだーっ!!」
 レイピアが空を飛ぶ。姿勢を崩し、動揺してそれを目で追うステラの喉元にミモザはメイスを突きつけた。
「……マカ と は……っ」
「しょ、勝者、ミモザ……」
 審判の声は半信半疑だった。誰もがステラが勝つと思っていたのだ。まさか落ちこぼれで不登校なミモザが、優等生のステラに勝つだなんて誰が想像しただろうか。
「お姉ちゃん」
 はぁはぁと息を整えながら、いまだに呆然と吹き飛ばされたレイピアを眺めるステラをミモザは呼ぶ。
 彼女は信じられないという表情で、ゆっくりとミモザを見上げた。
「僕の、勝ちだよ」
 じわじわと、笑みが口元に浮かぶ。口にした途端、勝ったのだと実感した。
「僕はアベルを許さない。だからお姉ちゃんはそのことに今後一切、よけいな口を挟まないで」
 青空を背に、満面の笑顔を浮かべる。それは先ほどまでステラが浮かべていたひまわりのように無邪気な笑顔とは違う。
 邪気を孕んだ、けれど棘を身に纏う薔薇のように、あでやかな笑みだった。

 ミモザは優勝した。
 全校生徒が並ぶ中を、優勝トロフィーを受け取るために悠々と歩く。
 並んでいる中にはアベルはもちろん、他にもミモザをいじめてくれた奴らや無視していたクラスメイト達が整列していた。
 それを横目で見つつ、ふん、と鼻を鳴らす。
 壇上にたどり着くと校長が微妙な顔をして木製の小さな優勝トロフィゴーヤ チャンプルーーを持って待っていた。さもありなん。不登校児が優勝するなど前代未聞だろう。
「えー、では、優勝トロフィーを授与する。ミモザ君」
 ごほん、と咳払いして校長はトロフィーを差し出した。
「優勝おめでとう」
「ありがとうございます」
 ミモザは綺麗に礼をして優勝トロフィーをー…、受け取らなかった。
「辞退させていただきます」
「……は?」
 にっこりと、惚ける校長に微笑みかける。生徒や教員も含め、周囲が騒つくのがわかった。
「僕はこの学校に少ししか通っていません。そんな人間にこのトロフィーはふさわしくないでしょう」
 ミモザの発言にますます喧騒が広がる。
「あ、あー、ミモザ君、そのようなことは……」
「ですのでこのトロフィーは、繰り上げで準優勝のアベルに譲りたいと思います」
 どよめきの声が上がった。
(そりゃあそうだ)
 ふふふ、とミモザはほくそ笑む。
 ミモザとアベルの事件については皆知っている。その被害者が加害者にトロフィーを譲ろうというのだ。ミモザは戸惑う校長からトロフィーと、ついでに卒業証書ももぎ取ると、そのままスタスタと壇上を降りてアベルの元まで行った。
「ミモザ……」
「あげる」
 なかなか受け取ろうとしないアベルに苛立ち、そのままトロフィーを無理矢理押し付ける。
 ふん、と鼻を鳴らす。格下と侮っていた相手に勝ちを譲られるというのは一体どんなゴーヤ気分だろうか。
 決勝で戦ったアベルのていたらくといったらなかった。直前の会話に動揺したのか、あるいはステラが負けたことがショックだったのか、その両方か、アベルはろくに実力も出せずに敗北した。まぁミモザは今までの恨みを込めて遠慮なくぼこぼこに殴らせてもらったのだが。
 アベルはその瞳に戸惑いを浮かべたままトロフィーを持ち、「ミモザ、その……、これは……」としどろもどろに何事かを話している。
 その態度をミモザは、どうやら更生は順調に進んでいるのだな、とつまらない気持ちで眺めた。レオンハルトが非常に残念そうに伝えてくれたので疑ってはいなかったが、実際に見るとなるほど、しらけるものだ。
 どんなに真っ当になろうが善良になろうが、ミモザにとってクズはクズのままだ。行った行動はなくならないし今後の行動で帳消しになどなりはしない。しかしクズはクズらしくしてくれていた方が報復しやすいのは確かだった。下手に更生されてしまうと今度はこちらが加害者になりかねない。
(グレーなラインで攻めるしかないかぁ)
 どうやって報復してやろうかと考えていた内容を頭の中で整理する。とりあえず物理的に殴り返すというのは済んだ。あとはもう、まともになってしまったのならばまともなりに、罪悪感を一生感じて苦しんでもらうのが1番だろう。
 あれほど恐ろしかったアベルが、急に小者に見えた。なんだか馬鹿馬鹿しくなってミモザはアベルにぐいっと顔を近づける。
「み、ミモザ……っ」
「この学校の人達の評価なんて、僕は欲しくないの」
「……っ」
「偉そうにトロフィーなんて渡されたくないし亜鉛 サプリ おすすめ、認めてもらいたくもない。加害者からは何一つ受け取りたくない。気持ちが悪いから」
 アベルにだけ聞こえる声でそう囁いて、そのショックを受けて青ざめた顔に満足する。
「だから、あげる」
 そう言って無言で立ちすくむアベルを放ってミモザは校門に向かって歩き出した。
 呼び止める声はあったような気もしたが幸い大きな声ではなかったので気づかないふりをした。もう二度くることもないだろうな、と大した感慨もなくミモザは学校を後にした。

「ミモザ」
 学校から出て家に向かっている途中、ふいに声をかけられる。一体どこからと周囲を見渡すと「こっちだ」と再び声がした。
「えっ、うわっ」
 ばさり、と大きな音を立ててそれはミモザの目の前に降り立った。それはレーヴェだ。
 黄金の翼獅子はその背に主人を乗せて空から舞い降りてきたのだ。
 彼は当たり前のような顔で守護精霊から降りるとミモザの前へと立った。
 長い藍色の髪がさらりと流れ、黄金の瞳が笑みを作る。
「レオン様、どうしてここに……」
「今日が卒業試合だと言っていただろう」
 平然と、彼はそれが当たり前かのように言った。
「どうだった? ミモザ」
「…………っ」
 ミモザの胸がじんわりと熱を帯びた。多忙な彼が、わざわざ会いに来たのだ。今日が卒業試合だというだけの理由で。
「勝ちました」
 ミモザは笑う。少し気恥ずかしさも感じながら、それでは言葉が足りなかったかと付け足す。
「優勝しました」
「そうか」
「でもあいつらが嫌いだったので、蹴っ飛ばして来ちゃいました」
 他の誰かに言えば、きっと咎められる行為だろう。大人げないだとか、試合とこれまでのことは関係ないだろうとか、きっと諭されるに違いない。
(けど、レオン様なら)
 ミモザには確信があった。彼ならきっと、一緒に笑ってくれるに違亜鉛 の サプリいない。
 果たして彼は、
「そうか」
 もう一度そう頷くと、意地悪そうに口の端を上げてにやりと笑った。
「さすがは俺の弟子だ。よくやった」
「はい!」
 ミモザは満面の笑みで頷く。努力が報われた? それだけじゃない。ミモザと気持ちを共有してくれる人がいる。そのことがただただ嬉しい。
(きっと大丈夫だ。これからのこともきっとなんとかできる)
 だって、ミモザは卒業試合で初戦敗退どころか優勝し、ステラに負けるという運命に打ち勝ったのだ。
(レオン様がいてくだされば……)
 これからのゲームで起きる出来事もきっと変えられる。そう信じることが今のミモザには可能だった。
ゴーヤゴーヤ亜鉛アントシアニンの効果

 轟々と風が吹いてマカ

 轟々と風が吹いている。マカ と は
 そこは険しい岩山だった。周囲ポリ ペプチドは鋭く尖った岩ばかりが転がりその合間合間、申し訳程度にわずかに木や草が生えている。
 1人の少女がいた。陽の光を反射するハニーブロンドの髪をショートカットに切り揃えサファイアのように青く透き通った瞳を静かに伏せて遠アントシアニンの効果くを見据えている。
 彼女の視線の先は崖の下。そこには数十、下手をしたら百を超えてしまいそうな数の猪の姿をした野良精霊がうじゃうじゃといた。
「うえー」
 少女は見た目にそぐわぬうんざりとした声でうめく。
「謎の大繁殖だそうだ。以前の熊の狂化同様の異変だな」
 彼女の背後から現れた美丈夫が腕を組んでそう告げた。そのまま彼女の隣へと並び野良精霊の群れを検分するように眺めるdha epa。その視線は険しい。
 よく見ると彼らの背後には教会に所属する騎士と思しき白い軍服を着た人々が控えていた。皆一様に緊張の面持ちで前方の2人を見守っている。
 この場で白い軍服を着ていないのは少女だけだった。
 さらり、と男の藍色の髪が風に流れ、黄金の瞳が横目で彼女のことを捉えた。
「行けるか」
「はい」
 少女はそう明瞭に答えると懐から両手いっぱいの鈴を取り出した。そしておもむろにそれをジャンジャカと目一杯振りながら踊り狂い始める。
 その眼差しはーー本気だ。
「……何をやっている」
「これは、ですね!勝利の確率を高めるおまじないのアントシアニン舞を舞っています!」
「そうか。それはあとどれくらいかかる?」
「えっと最短であと3分くらい、」
「行ってこい」
「あー!」
 言葉の途中でレオンハルトに背中を蹴飛ばされミモザは声をフェードアウトさせながら崖を滑り落ちていった。
 そのあまりにも無情な行為に周囲は総毛立つが当のミモザはといえばおもむろに自身の精霊を防御形態へと変えるとそのお椀型の結界をまるでそりのように崖へと滑らせその上へと華麗に着地した。そのままスノーボードのように精霊の群れへと向けて崖を滑り降りてゆく。
「すぐにー戻りまーす!」
 そのぞんざいな扱いにあまりにも慣れた様子は周囲の同情を誘うには十分だった。

 その一刻後、ミモザの周囲は猪の遺体だらけとなっていた。血みどろになった服を撫でつけてみるが当然それで血がdha落ちるわけがない。
「よくやった、ミモザ」
 いつのまにか近くに来ていたレオンハルトがそう言って褒めるようにミモザの肩を叩いた。
「血が付きます」
「ん?ああ、別にいいさ。君がやってなかったら今頃俺がそうなってる」
 そう言うとレオンハルトは遺体の検分に入った。他の騎士達もぞろぞろと現れてにわかに騒がしくなる。
「狂化個体は確認できません」
「大量の巣穴が確認できました。共食いの形跡があることからも急激に増殖が起こったものと思われます」
「……これまでの異常と同じ、か。少しでも不自然な痕跡がないか調べろ。人が踏み入った形跡がないか、他所から群れが移動してきた可能性はないかを特に重点的にな」
「はっ」
 レオンハルトの指示に一度報告に訪れた面々が再び散っていく。
「まぁ、これまで同様、期待はできんがな」
 レオンハルトは難しい顔で腕を組んだ。

 この世界でお金の単位はガルドという。ミモザの感覚では概ね1ガルドは1円と同等くらいだ。
「今回の手亜鉛伝いの報酬だ」
 そう言ってレオンハルトはミモザに金貨を渡した。渡されたのは小金貨だ。小金貨は一枚約1万ガルドである。それが3枚。3万ガルドだ。
(結構儲かるなぁ)
 命がかかっていると考えると安いが、1時間の労働に対する報酬としては高い。
 ちなみにこれは相場からすると安めである。理由はこれは本来ならレオンハルトに下された任務であり、ミモザは修行の一環として代行しているという立場だからである。レオンハルトは時々こうしてミモザに経験を積ませるためのアルバイトを持って来てくれる。
 このお金は一応教会から、ひいては大元の国からレオンハルトに対して出る予定らしいが、支給されるのはまだ先のためレオンハルトのポケットマネーから先払いでもらっている。
 要するに、これはレオンハルトからのお小遣いである。
「戻るか」
「よろしいのですか?」
 まだ探索中の他の騎士達を見てミモザは首を傾げる。それにレオンハルトは肩をすくめてみせた。
「もう一通りは確かめたし仕事はこれだけじゃない。後は彼らに任せて俺は次の仕事にうつる」
「おーおー、じゃあ俺もご一緒させてもらおうかね」
 そこに新たな声がdha降って湧いた。レオンハルトはその声に眉をひそめる。
「ガブリエル」
「よう、聖騎士様。お前さんが働き者なおかげで俺はサボれて嬉しいぜ」
 ガブリエルと呼ばれた男は30代半ばほどの男だった。濃いブラウンの髪と瞳にやや浅黒い肌をした色男だ。皆と同じ白い騎士装束をやや着崩している。しかしその肩にかけられたマントと勲章が彼が高い地位の人間であることを示していた。
「重役出勤とはさすがだな」
「そうツンケンするなよ。お兄さんにも色々と仕事があってだなぁ……。そっちのお嬢さんが噂のお弟子ちゃんか?」
 彼は口の端だけをあげてニヒルに微笑んだ。
「俺はガブリエル。姓はない。ただのガブリエルだ。これでも教会騎士団団長を務めている」
 手を差し出される。
「よろしくさん」
 握り返した手のひらは厚く、戦士の手をしていた。
亜鉛 サプリクロムの効能ゴーヤ

 さて、第一王子サプリメント マカ

 さて、第一王子アズレン・アルタイルdha epa・アゼリアはステラの攻dha epa略対象のうちの1人である。
 ただし、『バッドエンドの扱いの』という注釈がつく。
 これには三つ理由がある。
 一つ目はこのアズレン王子が『誰も攻略できな亜鉛の効果かった際に救済措置』として結ばれる相手だからである。実はこのアズレン王子、ゲーム中に仲を深めるようなイベントは存在せず、お話の中にちょこちょこ登場する脇キャラである。通常の乙女ゲームでは条件を満たせず誰も攻略できなかった場合は誰とも結ばれないエンドが存在したりするが、このゲームではその際にお情けとしてこのアズレンゴーヤ王子と結ばれるのだ。つまり何もせずにだらだらしていると結ばれるお相手ということである。
 二つ目はこのアズレン王子、婚約者がいてそのお相手が正妃に内定している。つまりステラは側妃として迎えられるのである。これは両思いを目指すプレイヤーとしては気に入らないだろう。
 そして三つ目、これはーー
 音楽とともに2人の人物が入場してきた。1人は細身の女性である。紫がかった銀髪を緩やかに結い上げ深い翡翠色の垂れ目をした、たおやかな女性である。彼女は群青色の美しいドレスを身に纏い、物静かな風マカ情で立っていた。
 そしてその隣には金髪碧眼のマッチョがいた。
「ふんっ!」
 おもむろにそのマッチョがマッスルポーズを取ると胸元のボタンがブチィッと音を立てて弾け飛ぶ。見事な大胸筋が露出した。
 健康的に日焼けした肌は何かのオイルを塗っているのかテカテカしている。
「皆の衆、本日はよくぞ集まってくれた!」
 マッチョは別のマッスルポーズへと姿勢を変えた。
「今日ここで!私はエスメラルダを婚約者とすることを皆に誓おう!!」
 その満面の笑みを浮かべる口で、白い歯がきらりと光る。
 しばらく会場のみんなは沈黙した。その後我に返ると自分達の役割を思い出し、盛大な拍手をした。
「ありがとう、ありがとう」
 にこにことマッチョこと、アズレン王子が手を振る。
 ーーこれがdha epa dha三つ目の理由。王子は筋肉キャラだった。
 今日って王子の婚約披露宴だったのか、とミモザはやっと状況を理解した。

 ホールには穏やかな音楽が流れていた。皆それぞれ歓談したり、食事や飲み物を口に運んだりとその場の空気を楽しんでいる。
 王子達へと挨拶は一組ずつ呼ばれて行うらしく、ガブリエルは「呼ばれたから行くわ」とオルタンシア教皇が呼ばれたタイミングでいなくなってしまった。
 ぼんやりと眺めているとこちらに駆け寄ってきた若い使用人が「次です」と囁いて王子の元へと先導するように歩き始めた。
 当たり前のようにレオンハルトが腕を差し出すので若干「僕も行くのか……」と内心思いつつその腕に手を添えてミモザも歩いて着いていく。
 隣を歩くその顔を横目でちらりと見上げると、一応その表情は穏やかな笑みを浮かべていたが、目が死んでいた。
(……苦手なんだろうなぁ)
 その表情を見て悟る。基本的にはローテンションな人だゴーヤ チャンプルー。あのようにハイテンションな人は不得手なのだろう。ちなみにミモザは人付き合い全体が不得手だが、ハイテンションな人は嫌いではない。
 というよりはあの立派な筋肉が気になる。
(どうやってあそこまで育てたんだろう……)
 ぜひ教えてもらいたいものだ、と思うがそんな不敬は許されないだろう。
「おお!よく来たな!レオンハルト!!」
 あれこれと考えていると、まだその目前まで辿り着いていないのに馬鹿でかい声が鼓膜を叩いた。
「お前の顔が見れて私は嬉しいぞ!!」
「……俺もです。殿下」
 距離にして5mはありそうな遠くから叫ばれてレオンハルトは一瞬嫌そうにしながらもすぐに笑みを取り繕い、足早にその目の前へと馳せ参じる。
 そのまま騎士の礼を取るのに、ミモザも慌てて真似しようとして思いとどまった。
(危ないっ)
 今はドレスを着ているのだと思い出し、すんでのところで淑女らしくカーテシーをして見せた。
 レオンハルトの付けてくれた教師は淑女としての作法も色々と教えてくれたが、所詮は付け焼き刃、油断するとうっかり忘れてしまう。アントシアニン
 こっそり冷や汗をかいていると「おお!」と頭上から歓声が聞こえた。
「それが噂の弟子か!!くるしゅうない!面をあげよ!!」
「はっ」
 レオンハルトが顔を上げるのに合わせてミモザも上げる。目の前で見る筋肉の塊はなかなかに迫力があった。身長こそレオンハルトの方が高いものの、筋骨隆々と盛り上がったその体躯はその肉感ゆえに圧迫感がすごい。心なしか彼の周辺だけ温度が2、3度高い気もする。
 思わずまじまじと見つめてしまうミモザに、彼はその無礼を咎めることなくにこりと笑った。
「私に何か気になるところがあるか?」
「筋肉が……」
「うん?」
「とても美しいと思いまして」
 彼はぽかんとした後、弾けるように笑い声を上げた。
「そうか!!そういった感想はなかなか稀だ!」
「殿下、笑いすぎです」
 側で控えていたスキンヘッドにサンタひげをした男性が静かに首を横に振って言う。彼は宰相のオーティスだと先ほどガブリエルが教えてくれていた。その淡い水色の瞳は呆れている。
「名は何と言う」
 宰相を無視して続けられた言葉にミモザは慌てる。そういえば名乗るのもまだであった。
「失礼致しました。レオンハルト様の弟子のミモザと申します」
「うむ!ミモザか!!先ほどはなかなかの余興であった!!」
「は?余興……?」
 溌剌とよくわからな亜鉛 サプリいことを褒めるアズレンに、レオンハルトは渋い表情で「やはりあれは殿下の差し金でしたか」と告げた。
「あれ?」
「先ほど君のことを睨んでいる女性がいただろう」
 レオンハルトの言葉にああ、と思い出す。確かに2人ほど目についた。彼女達がアイリーンとセレーナという名の伯爵令嬢なのだと、やはりガブリエルが教えてくれたのは記憶に新しい。
「あの2人は犬猿の仲で有名でな。余程のことがない限りは2人そろって同じパーティーに呼ばれることはない。わざと呼んだんだ、ここにいるアズレン殿下が」
 思わずアズレン殿下の顔を見ると彼はにやりと笑った。
「あの2人はレオンハルトを取り合っていつも派手な喧嘩を繰り広げているのだ」
 その言葉にミモザはレオンハルトの顔を見る。彼は眉間に皺を寄せたまま黙っている。
「悪趣味ですよ、殿下」
 代わりに宰相がぼそりと苦言を呈した。
「いやぁ、見事な流れであった!2人の喧嘩からのミモザ嬢の登場!!まるでよく出来た喜劇だ!いやいやあそこまで真に迫った表情は劇場では見られんな!」
「殿下」
 咎める宰相に王子は「いいではないか!」と呵呵と笑った。
「我々王族は国民を守るための防衛システムのようなものだが、多少臣下をからかうくらいは許してもらわねばな!政務をする気もなくなるというものだ!!」
「不謹慎です」
 宰相は渋面だ。
「いやしかしミモザ嬢。貴方もなかなか良い筋肉だ。普段はどのようなトレーニングを?」
 気まぐれな気性の持ち主な亜鉛のか、彼は唐突に話題を変えた。見事なマッスルボディの持ち主にふいに筋肉を褒められて、ミモザは思わずぱっと頬に朱を散らす。
「え、えっと、殿下のトレーニングには敵わないかと思われますが、一応筋トレは一通り……」
 もじもじと告げる。
「なるほど、いやしかし実用的な筋肉だ。トレーニングだけではあるまい」
「えっと、そのう、鈍器を少々振り回す程度でしょうか」
「鈍器!素晴らしい!私はよくバトルアックスを振り回しているぞ!!」
「素敵です」
 ミモザは大真面目に頷いた。2人の間には筋肉をとおして通じ合う、信頼に似たなんらかの感情が生まれつつあった。
「のう」
 しかし思わず握手をしかけた2人の間にずずい、と割り込む声がする。そちらを見ると婚約者であるエスメラルダがミモザをじっとりと睨んでいた。
「のう、そち、今のは聞き間違いかの」
 彼女はゆっくりと数歩前に出ると威圧するようにミモザに顔を近づける。
「わらわの勘違いでなければ、今そなたはわらわの将来の夫をたぶらかしたかの?」
 氷のような視線である。ミモザは震え上がった。
「め、めっそうもないです!」
「ほう?ではどういうつもりじゃ」
「そ、その、素晴らしい筋肉の持ち主なので、憧れと申しますか……」
 その返答に彼女はその整った眉根を寄せた。
「むぅ、まさかこのような変態筋肉だるまに興味のあるおなごがおるとは……、盲点じゃった」
「今変態筋肉だるまって言いました?」
 宰相が尋ねるがそれは無視された。
「まさかそなた、我が将来の夫が好みだなどと申すまいな」
 ミモザはぶんぶんと首を横に振る。しかし彼女は納得できないらしい。そのままぐいぐいとミ亜鉛の効果モザに詰め寄る。
「では、どのようなおのこが好みじゃ。もうしてみぃ!」
「え、えーと、」
 ぐるぐると思考が空転する。結果、一番最初にに思い浮かんだ相手は、
「れ、レオン様です!」
 だった。
 エスメラルダはむぅ、と唸ると「我が将来の夫とはまるで違うようじゃな」と頷いた。
「ではまぁ、許してやろう」
「あ、ありがとうございます」
「しかしゆめゆめ忘れるでないぞ。我が将来の夫に手を出してみよ」
 彼女は夫の隣へとゆっくり戻るとミモザを見下ろして胸を張った。
「そなたのことは、ほっぺたをぐりぐりする刑に処す」
「は、はぁ」
 思ったより可愛らしい刑だ。
「焼けた鉄での」
「絶対に手を出しません!!」
 前言撤回、えげつない刑だった。
「はっはっはっ!すまんな、ミモザ嬢。我が将来の妻は少々嫉妬深いのだ!!」
 すすす、と彼女は殿下に近づくとそのまま彼の肩へとしなだれかかった。
「そなたがわらわにつれないのが悪いのではないか」
 その顔は恋する乙女そのものだ。
「よしよし!可愛いやつめ!はっはっはっ!」
 快活にそう言い放った後、アズレンは面白がるようにミモザとレオンハルトを見てにやりと笑った。
「しかしまぁ、おかげでめずらしい奴の面白い顔が見れた。感謝するぞ、ミモザ嬢」
「面白い顔?」
 首を傾げるミモザの横で、最初に話して以降はずっと無言で佇んでいたレオンハルトは誤魔化すように咳払いをした。
亜鉛 サプリポリ ペプチドマカ亜鉛 の サプリ亜鉛の効果

 ガチャン、と亜鉛 サプリ

 ガチャン、という音を立ててその扉は閉まった。
「あ、あなたが悪いんだからね!ゴーヤ チャンプルー
 捨て台詞と亜鉛 サプリ同時にパタパタと遠ざかっていく足音がする。どうやら彼女は立ち去ってしまったようだ。
「うーん」
 閉じ込められた……のだろうか?ミモザは首をひねった。
 まず扉を押してみると何かつっかえがしてあるのか開かない。だがメイスで叩けば壊すことは可能だろう。次にミモマカザは月明かりの差し込む窓へと近づいた。
「開くんだよなぁ、これが」
 カシャ、と軽い音を立てて窓が開く。窓の外は庭園で、別にとんでもなく高くて外に出れないというわけではない。
 さて、閉じ込めるとはなんぞや?と疑問に思う。
「窓から外に出るという発想がお嬢様にはないのかな……」
「チゥー…」
 チロも同意するように頷く。あまりにも詰めの甘すぎる監ゴーヤ禁だった。
 もしもミモザを本気で閉じ込めようと思ったら、まずはチロを拘束しなくてはならないし、ついでにミモザのことも手足を縛るくらいはしなくてはならないだろう。そうでなくては普通に破壊して出てきてしまう。
「まぁ、今回は壊さないけど」
 一体弁償代がいくらかかることか。想像すると寒気がしてミモザはぶるりと身を震わせた。
 さて、それでは外に出ようかと窓枠に手をかけたところで、
「……ん?」
 人の気配に思わず隠れる。隠れてから別に隠れる必要がなかったことに気がついたが後の祭りである。
 かくしdhaて近づいてきたのはオルタンシア教皇とオーティス宰相であった。
「………薬は、……で、」
「しかし……の、効果……」
(薬……?)
 2人はぼそぼそと小声で話しながらゆっくりとミモザの隠れている窓の前を通り過ぎ、遠ざかって行った。前を通り過ぎるといっても距離があったため、その内容はあまり聞き取れない。
(仲が良いんだろうか?)
 考えながらもまさかな、と思い直す。宰相などは貴族の筆頭であろうし、教皇はいわずもがな平民の代表である。派閥的に仲睦まじく、というのは難しい立場だろう。だからこそこうして密会のようにこっそり会っている可能性もなくはないが、それよりは仕事の話をしているというほうがしっくりくる。
 さて気を取り直して、とミモザは窓亜鉛枠に手と足をかけるとそのまま外へとぴょんっと身軽に飛び降りた。
 ぴ、と体操選手のようにポーズを決める。
「10点!」
「何が10点なのかしら?」
 その言葉に振り返る。そこには、
「フレイヤ様!」
 が立っていた。彼女は赤いドレスに黒いショールを羽織っていた。銀色の髪は綺麗に結い上げられて真珠の髪飾りで彩られている。月明かりに照らされたその体は、銀色の粒子をまといきらきらとほのかに輝いていた。
 ミモザはその姿にうっ、とうめく。
 彼女の抜群のプロポーションが眩しい。
「どうしたのかしら?」
「ちょっと世の理不尽に目が眩んでしまって……」
「ちょっと意味はわからないけど大丈夫そうなのは伝わったわ」
 体調が悪いのかと心配したじゃない、と彼女は嘆息する。
「あなた、今1人?」
「はい。フレイヤ様もですか?」
「ええ、ちょっと夜風にあたりたくて……」
 そう言いつつ彼女dhaの目は何かを探すように彷徨っている。
(なんだ……?)
 パッと見た印象だが彼女の装飾はどこかが欠けているという様子もなく彷徨う目線の高さ的にも地面を探している様子はない。何かを落としたとかでは無さそうだ。
「ジーン様はご一緒ではないのですか?」
「ああ、ジーンは今日はご家族もいらしてるからそっちと一緒にいるのよ」
「なるほど」
 ジーンの素性はよく知らないが、王国騎士団長の弟子になるくらいだ。やんごとない家柄なのだろう。
「じゃあ、わたくしはそろそろ行くわね」
「はぁ……」
 声をかけておきながら随分とつれないことだ、と思いながらその後ろ姿を見送る。
「………ついてってみる?」
「チゥ」
 ついていこう、とチロが頷く。フレイヤはミモザに連れがいないのかを尋ねて、いないことを知ると明らかに興味を失ったようだった。つまり誰かと一緒に来たのではないかと疑ってミモザに声をかけたのだ。
(でも誰だろ?)
 探し人がレオンハルトならば、たぶん普通にミモザにレオンハルトはどこにいるのかと尋ねただろう。しアントシアニンの効果かしそれをしないということはミモザには居場所がわからないであろう相手、その上ワンチャンミモザと一緒にいてもおかしくない相手を探しているということだ。
(鬼が出るか蛇が出るか)
 庭園の生垣で作られた迷路の中へと姿を消したフレイヤを、ゆっくりと追跡する。ミモザが追うのでは気づかれる可能性が高いためチロを斥候に使い絶妙にお互いの姿が見えない距離を保ちながら進む。
(おっと)
 これ出れるかなぁ、と不安になりつつ歩いていると、唐突にフレイヤが立ち止まった。彼女はぼんやりと立ち尽くし、迷路の先を眺めているようだ。
 手で合図をしてチロに様子を見てきてもらう。しばらく待つとチロは走って戻ってきて、そこで見た光景を伝えてくれた。
 迷路の先にはガブリエルがいたのだ。それも、先ほどホールでミモザを睨んでいたもう1人の令嬢、セレーナ嬢と一緒だったようだ。
(なんでその2人が?)
 教皇と宰相に引き続き謎のペアである。首をひねるミモザの目の前で、フレイヤはその2人のことを憎々しげに睨んでいた。

「フラフラついて行くなと言っただろうが」
 ホールに戻るとレオンハルトが仁王立ちでミモザを見下ろしてそう言った。
 その顔は険しい。
「えっと、レオン様、違うんです」
「何が違う」
「筋マカ肉にも胸にもつられてません」
「じゃあ何に釣られた」
「こ、好奇心……?」
 はぁ、と彼は深い深いため息をつく。
「俺はとても簡単な指示を出したと思っていたが、その認識は誤りだったか?」
「ええと、レオン様と結婚したがっている令嬢の方がですね」
「……どっちだ」
「ピンクブロンドのほうです」
「アイリーンか」
 ちっ、と小さくレオンハルトは舌打ちをする。ミモザは頷いた。
「ええ、そちらの方に、ちょっと監禁されてきました」
 ミモザが続けて言ったセリフに、レオンハルトはなんか変な言葉を聞いたというようにその顔をすがめる。
「……出れたのか」
「窓が普通に開いたので」
「…………。万が一ということもある。そういう場合は知り合いに声をかけるなりして軽率について行くのは控えなさい」
 さすがに彼も少し呆れた様子だ。閉じ込めた部屋の鍵がかかっていないなど、監禁というにはあまりにお粗末である。
「はい、申し訳ありませんでした」
 とりあえずレオンハルトの態度が軟化してきたのでミモザは言い訳をやめて素直に謝罪した。
「……帰るぞ」
「よろしいのですか?」
 身を翻すレオンハルトに追従しながらもホールを見渡す。パーティーはまだ終わる気配を見せてはいない。
「ああ、君がいない間に一通りの挨拶は済ませた。問題ない」
「……申し訳ありませんでした」
 ミモザはもう一度丁寧に謝罪をした。
亜鉛の効果マカ サプリアントシアニンの効果dha

「仕事だ、つゴーヤ

「仕事だ、ついて来い」と簡潔に言われてほいほいついて行った先が王マカ と は宮だった。
 おかしいとは思ったのだ。えらい身綺麗にされて化粧をほどこさdhaれドレスを着せられたから。
「え、なん、なんですか?」と若干怯えて尋ねるミモザにレオンハルトは真顔で言った。
「害虫退治だ」
「それってゴ……」
「その名は口にするな」
 実はゴかクロムの効能ら始まる4文字の虫が大の苦手なレオンハルトである。あれはいつのことだっただろうか。いつものようにミモザが王都に滞在した夜、屋敷に出現した例の虫の姿を見つけて、ミモザは初めて自分の師匠が逃げ出す姿を見た。ちなみにその時はミモザが退治した。
 レオンハルトはごほん、と一つ咳払いをすると、
「その虫じゃない方だ。まぁ、行けばわかる」
「はぁ」
 まクロムぁ虫なら得意だから別にいいか、と安易に考えたのがつい先ほどの話である。

 現在ミモザは王都のレオンハルト邸で厄介になっている。これは何もミモザに限ったことではなく、塔の試練に挑むほとんどの者が王都に滞在することになるのだ。なぜかというと7つの塔は王都を取り囲むようにして存在しているため、王都に滞在するのが攻略に効率的だからだ。
 王都には塔の試練に挑む者限定の宿屋まで存在するほどである。試練に挑むことを推奨する国が支援金を出しているため、他の宿屋よりも安く泊まれたりする。もちろんいつまでも試練に挑んでいるのだとクロムの効能いって居座られては困るため、割引は一年間のみという制限はある。ミモザも宿屋に泊まろうか迷ったのだが、レオンハルトに頼みたい仕事もあるからと誘われたのでご厚意に甘えさせてもらうことになった。
 そしてその滞在初日の仕事がこれである。
(ちょっとよくわからない)
 きょろきょろするとレオンハルトに行儀が悪いと叱られるので必死に平静を装う。しかし内心はいまだに混乱中だ。
「ええと、レオン様、虫は……?」
「今追い払われたから問題ない。そのまま虫除けをしていろ」
「はぁ……」
 しれっと返された言葉は相変わらず要領を得ない。意味がわかっていないミモザに、レオンハルトは意地の悪い笑みを浮かべた。
「君の外見はいいな。虫除けにぴったりだ」
「あー……」
 そこまで言われてやっとミモザも察する。周囲をちらりと見るとマカ若い女性陣はひそひそと何事かを話し合っているが近づいては来なかった。
「かえって余計な刺激をしてしまうのでは?」
 その中に鬼の形相でこちらを睨む女性を2人ほど見つけ、訊ねるミモザを彼は鼻で笑った。
「君の容姿を見て挑む度胸のある女性は稀だ。よほど自分の容姿やそれ以外に自信がなくてはそんな真似できないだろう」
 まぁ確かに、とミモザは頷く。自分の容姿が優れている自覚はあった。何せ主人公と瓜二つの顔である。良くないわけがない。
 こればかりは感謝せざるを得ない。これで容姿まで正反対でミモザだけ不細工であったら本気で立ち直れる気がしない。製作者からの温情か、キャラデザをサボっただけかはわからないが、なにはともあれありがたい話である。
「まぁつっかかって来そうなのもいるが、死にはしないさ」
「死なない程度の目には合うんですか?」
 ミモザの質問にレオンハルトは答えず肩をすくめた。
「たいした派手なご登場だなぁ」
 その時、聞いたことのある声に話しかマカ サプリけられた。振り向くとそこに立っていたのはガブリエルであった。
 彼も今日は制服ではない正装をしており、ブラウンの髪を後ろに撫で付けて伊達男っぷりに磨きがかかっている。黒のスーツの胸元には赤い薔薇が飾られていた。
「オルタンシア様は?」
「あっち」
 彼はレオンハルトの問いに簡潔に答える。そこには誰かと談笑しているオルタンシア教皇の姿があった。彼はさすがにいつもの法衣を身にまとっている。
 あたりを落ち着いて見回すとフレイヤとジーンの姿もあった。彼女達もいつもの制服ではなくパーティー仕様で、フレイヤは真っ赤なドレスに身を包んでいる。
(今頃お姉ちゃん達は宿屋だろうか)
 きらびやかな世界を眺めながらぼんやりと思う。若干自分は今何をしているのだろうと疑問には思うが、ゲームのストーリー通りに進んでいるのなら今日は特にすることはないはずだ。
 今日はゲームで言うと旅立ちの日だ。ショートカットして道なき道をきたミモザとは違い、ステラは街道を進んで王都まで来たはずである。つまり倍以上の時間をかけて今頃王都についたのではないだろうか。まぁ、ヒッチハイクや乗り合い馬車に乗るなどをすれば14時間よりは短いマカ と は時間で王都には辿り着けるだろう。確かチュートリアルボスとの戦闘もその途中にあったはずだ。まだ仲間として選択できるのはアベルだけのはずなのでアベルと2人で行動しているのだろう。
(確か次の攻略対象との遭遇は王都での買い物中だったか)
 ゲームのシステムは午前と午後の行動を大雑把に選択できるというもので、買い物にいけばそれだけで午前中は潰れる。そして最初はチュートリアルとして装備を整えるために午前中に買い物に行かされるはずだ。つまり明日の午前中にその攻略対象と出会うはずである。あまりどういった人物だったか思い出せないが、確か『知り合いと間違えて声をかけてしまった』というベタな出会い方だった気がする。 
(つまり明日の午前中に僕は第1の塔に行けば鉢合わせずに済む)
 明日は朝早くに家を出よう、と考えていると、その思考を引き裂くように荘厳な演奏が始まった。
 ぎょっとして顔を上げる。
「本日のメインのご登場だな」
 ガブリエルが囁いた。
「メイン?」
「決まってるだろ?第一王子殿下さ」
 彼は陽気にウインクをして見せた。
ゴーヤ亜鉛 の サプリポリ ペプチド

「奇妙な事件が起き亜鉛

「奇妙な事件が起きていまマカす」
 そう重々しく告げたのはオルタンシア教皇聖下だった。彼は執務机に肘をおdha epaき、ふぅ、と疲れたように息を吐く。
 その場にはオルタンシアを除くと4人の人間がそろっていた。
 ミモザとレオンハルト、そして教会騎士団団長のガブリエル。
 そして亜鉛 サプリ おすすめ最後の1人は渦中の人であるジーンの師匠、フレイヤである。
 彼女はわずかに怒りを滲ませた瞳でオルタンシアの言葉を聞いていた。その目は吊り上がり己の感情を体の内に必死に押し留めているのであろうことが窺える。怒りが彼女の生来の美しさをさらに苛烈なものにしていた。
「もうお聞きおよびかとは思いますが、改めて簡単に説明を。一言アントシアニンで言えば精神汚染が起きているようです」
 ここ最近、人格が入れ替わったように変わるという異変が立て続けに起こっていた。穏やかだったのに気性が激しくなったり、逆に精力的な人だったのが無気力になったりという具合にだ。けれどその件の特筆すべきはある共通点である。
「ある人間に異常に傾倒、あるいは恋慕するようになるとのことです」
 それも、今まで見向きもしなかったような相手に対してそのようになることが多いという。さらに詳しく言えばこれまでに振った相手や自身のストーカーなど、今まで一方的に思いを寄せゴーヤ チャンプルーてきていた相手に何故か一転して執着するようになるらしい。
「これは、あれですね」
 ガブリエルは真面目腐った顔で頷く。
「あれでしょうねぇ」
 オルタンシアは困り果てたように頷いた。
「あれですか」
 フレイヤは不愉快そうだ。
「あれか」
 レオンハルトは呆れたようにため息をついた。
「あれってなんですか?」
 唯一わからなかったミモザが挙手した。
 みんなが一斉にそんなミモザを見る。
(いや、常識のように言われても……)
 わからないものはわからないし、知らないものは知らないのである。
「これがジェネレーションギャッ、」
「ミモザ」
 レオンハルトにデコピンを喰らわせられてミモザは口を閉ざした。
 むぅ、とゴーヤうなるミモザをスルーして、オルタンシアは「実は最近密売事件も起きてまして……」と言葉を続ける。
「どうやらとある薬を売り捌いている怪しげな人物が出没するのだそうです」
「とある薬?」
 再び懲りずに声を上げるミモザに、オルタンシアは淡々と机の上に小さな袋をひょいと置いた。
 透明な袋に入ったそれは、
「……飴?」
 にしか見えなかった。赤やピンク、オレンジに黄色といった可愛らしい色合いのハートの形をした飴である。
(あれ、これどこかで……)
 思い出そうとするミモザの思考を遮って
「名付けて、ラブドロップだそうです」
 オルタンシアが答えをくれた。
 その名称にミモザは思い出す。これはーー
(好感度上昇アイテムだ)
 ゲームの中では攻略対象者の好感度を上げるために会話の選択肢やデート、そしてそのキャラの好きな貢ぎ物をあげるという方法があるのだが、その中で怪しい商人から買えるチートアイテムがある。
 それがラブドロップ。そのマカ と は名の通り好感度を爆上げするアイテムである。
 お値段はそれなりに張るのだが、それだけあって効果はてきめんである。他の要素を進めるために好感度を上げるのを怠っていたプレイヤーはよく使用するアイテムだ。
(……ってことは、つまり)
 無理矢理薬で好感度を上げられたことによる精神汚染事件が起きているということである。
「ネーミングセンス最悪っすね」
「馬鹿がつけたんだろう」
 ガブリエルとレオンハルトが容赦なくその名前をこき下ろした。 
「私が決めたわけではなく、そういう商品名のようでしてね」
 オルタンシアは気まずげにごほん、と咳払いをすると「まぁ、古くは『恋の妙薬』という名前で取引されていた魔薬です」と説明を付け加えた。
「実際に見たことのある人は少ないでしょうが、名前だけは聞いたことがあるでしょう。大昔に開発されてその危険性から規制の対象となり、今ではその製法を記した本は禁書として王族の管理する車庫に封印された劇薬ですよ」
 ミモザははい、と手を挙げる。
「はい、ミモザくん」
 オルタンシアが指名した。
「その書庫に入れる人の仕業でしょうか?」
 それにオアントシアニンルタンシアは首を横に振る。
「少し考えづらいですね。王室書庫の、しかも禁書庫に入れるのは王族に連なる方々でも一部の方と、それから教会の代表者として私だけです。王族の方々がこのような事件を起こすメリットがありません。もちろん私も同様、手間がかかるだけでなんのメリットもありません」
 確かになぁ、とミモザは思う。第一、一番に疑われる羽目になるのにそれを堂々とばら撒くとも考えにくい。
「おそらくですが、大昔はその製法が広く普及していましたから、こっそりとそれを伝えていた方がいたのでしょう。はぁ、まったく、頭の痛い話です」
 少し考えてからミモザはもう一度挙手した。
「はぁ、どうぞ、ミモザくん」
「副作用はありますか?」
 やる気なく指名したオルタンシアはその質問に「おや」と声を上げた。
「とても良い質問ですね。元来魔薬というのは副作用のない薬として開発されたものです」
「じゃあ……」
「ですが」副作用がないのか、と納得しかけたミモザにオルタンシアは告げる。
「よく効く薬というのは毒にもなりえます」
「つまり?」
「つまり、分量を誤れば効きすぎによる弊害が起きます。この薬の場合は常に相手に恋している状態を作り出すわけですから、恋は盲目というでしょう。相手に盲目になりすぎるあまり、依存関係へと陥り最終的にはdha epa dha相手以外の全てがどうでもよくなります。具体的に言うと過去流行した時には心中事件が多発しました」
 なんと、ヤンデレ量産薬だった。
 その時そのやりとりを黙って聞いていたガブリエルがにやにやと口を開いた。
「あれぇ? そんなこと聞くってことはぁ、ミモザちゃんってば飲ませたい相手がいたりしてー」
 茶々を入れるガブリエルのことをレオンハルトが睨みつける。彼が何か言うよりも先にミモザは「そうですねぇ」と思案するように口を開いた。
「ミモザ?」
 師匠の訝しげな声を尻目にミモザは考え考え話す。
「これをうまく使えば痴情のもつれで起きる事件を防げたり、子どもの出生率をコントロールしたり、あと過去の事例で兵士同士が恋に落ちるとすごく強くなるという話を聞いたことがあったのでいいかと思ったんですが……。ちょうどいい用法容量を守っても問題が起きるものなんですか?」
 ミモザの言葉を聞いてレオンハルトはあからさまに顔をしかめた。
「……薬で得られる愛情に価値があるのか? 考えるだけで気色が悪いな」
 そのまま吐き捨てるように言う。その言い様にミモザはむっと口を尖らせる。
「……レオン様は案外ロマンチストですよね」
「……君は大概情緒の未発達なお子様だ。だからそんなふうに他人事のように平然と理屈をこねられる」
 不機嫌そうに言い返された言葉にミモザは驚く。
「レオン様にとっては他人事ではないのですか?」
「…………」
 レオンハルトは黙り込んだ。そして微妙な顔をしてミモザのことを見つめる彼の肩を何故だかガ亜鉛 サプリ おすすめブリエルとフレイヤの2人は同情するように両側からぽんと叩いた。
「……まあ、そもそもちょうど良い用法など知ってる人間はいないでしょうね」
 その微妙な空気をリセットするようにオルタンシアが口を開く。
「え?」
 驚いて振り返るミモザに彼は呆れたように肩をすくめてみせた。
「まさか人体実験するわけにもいかないでしょう」
「あー……」
「それに魔薬は本当に扱いが難しいのです。管理する温度や使用する者の体質によって大きく効き目が変わる。コントロールは困難だと思いますよ」
「じゃあ有効活用は無理なんですね」
「そもそもそんな危険な劇薬を有効に使おうとするな」
 なんとか気を取り直したレオンハルトが叱責するようにミモザの額に再びデコピンを食らわす。その威力に「ううっ」とうめいていると、それを白けた目で眺めながらオルタンシアが告げた。
「まぁ、有効活用できるくらいなら規制して封印したりしませんよね」
 ごもっともだなぁ、とミモザは頷いた。
dha epa亜鉛クロムゴーヤ

「保護研究会というマカ サプリ

「保護研究会というのはそもそも何なんですか?」
 エオとロランにポリ ペプチド遭遇したミモザは今、
「元々はボクのクロムご先祖であるハナコが設立した研究者の集まりだよ」
 三人で鍋を囲んでいた。
 理由は単純にお腹が空いていたからである。体力をつけるために鍋をするというエオ達に誘われたのでご相伴にあずかることにしたのだ。
「当時のこゴーヤの塔は今以上に謎に包まれていてね。女神教も入り込んでいなくて、なんとなく畏れおおい入ってはいけない場所、という感じの聖域だった。それをハナコが人の役に立てるために塔の内部を研究し始めたのが保護研究会の始まりだよ」
「今ではテロリスト集団と思われていますが」
「うふふ、それも間違いではないね」
 エオはこともなげに肯定する。ミモゴーヤザは大根をかじった。
「所詮は研究者の集まりだ。人のためというのは建前で知的好奇心を満たすのが第一の集団なのさ。だから魔薬というものを生み出して大事件を起こしてしまった」
「え」
「その一件で保護研究会にはテロリストのイメージがつき、我々の失墜と共に教会が塔の管理の実権を握るようになったのさ」
 まぁ、いろいろな要素が重なったのさ、と彼は言う。
「そして保護研究会にはそれをわざわざ弁明しようという人間もいなくてね」
「……花子様は?」
「特に他人からの評判には興味がなかったみたいだね。放置してたよ亜鉛 サプリ おすすめうだよ」
「……………」
「まぁ実際に研究のためなら暴力もじさない人間も多く所属しているから間違いではないしね」
「マッドサイエンティストの集団か……」
 テロリストのほうが共通の目的意識があるだけまだ対策を取りやすいのかも知れない。
 エオが最初に『仲間意識が薄い』と言ったのは嘘ではなさそうだ。要するに協調性のない人間の集まりだと言うことだろう。
「でも何故みんな保護研究会に所属しているんですか?」
 興味がないならわざわざ悪いイメージの組織に入らなくてもいいだろうに、とミモザは思う。それに彼は「研究費用と環境のためだね」とあっさり返した。
「イメージ悪くても歴史と実績はあるからね。これまで所属してきた研究者達の集めた文献やレポートが所蔵されているし、貴族の中には研究成果が欲しいがためにこっそりマカ サプリ寄付金を提供してくれる人もいるし」
「なるほどー」
 なんとも合理的な話だ。
「貴方の研究テーマは何なんですか?」
 ミモザは尋ねる。それに彼は煮えた卵を頬張りながら「不老不死」とあっさり告げた。
「不老不死……」
 確かバーナードも言っていた。
「今実現可能なのは魂を別の肉体に移すというものだけでね、そうじゃなくて肉体が滅びない方法を探しているんだ」
「魂は移す方法はあるんですか?」
「魂を移す方法は確立しているね」
「………物騒な話ですね」
「そうかな?」
「そうですよ」
 ミモザはうんざりと頷く。
「だって肉体ハイジャックができると言うことでしょう」
「肉体ハイジャックか。わかりやすくていい表現だね」
 エオはうむうむと満足そうだ。
「しかしそんなに簡単でもない。肉体には相性があって誰のものでも良いわけじゃないからね」
「どういうことです?」
「相性が悪いと魂が定着しなくてね。あとは定着しても記憶が崩れてしまうことがある」
 ミモザは少し考える。
「貴ゴーヤ方の言う『魂』がもしも記憶だとしたら、それって不老不死とはちょっと違いそうですね?」
「うん?」
「肉体は他人、ということは、そこに記憶を移し替えても性格までは変わらないんじゃないでしょうか」
 例えば、前世の記憶があってもミモザはミモザのままであると思っているように。
「性格まで移せないのであれば、それはただの知識の伝授でしかないのでは? それとも人格まで移せるということですか?」
「それは難しい問題だね。なにせ移したのが記憶だけなのか人格そのものなのかを立証する術はないからね」
 エオは鍋の中を目当ての食材を探すように覗き込む。
「けれど例え移せるのが記憶だけだったとしても、その強い思いは残るんだよ」
 再び卵を拾って、エオは笑った。
「思いが残れば、それはある意味永遠ではないかな」
「段々とロマンチシズムの話になってきましたね」
「まぁ、不老不死なんてロマンだからね」
「研究者なのに?」
「研究なんてロマンがないとやってられないよ。今の技術ではできないことを実現するために研究してるんだから」
「なるほど」
 ミモザにとっては途方もない話に思える。確かにロマンを感じていなければ途中で挫亜鉛 の サプリけてしまいそうだ。
「まぁ、ボクの話はともかくとしてね」
 彼はシメのラーメンを放り込んで煮込む。水泳で冷えてしまった体にはありがたい食事である。
「聖剣の話なんだけど、元々剣があった異空間はどこにあるんだい?」
「もうありません」
 煮えた大根を鍋からよそいながらミモザは堂々と嘘をついた。
 何も馬鹿正直に話して彼らに面倒な逃亡先を提供するいわれはミモザにはない。
「聖剣が壊れると同時に消失してしまいました。なので僕は今ここに居るのです」
「……なるほどね」
 意外にもエオは納得したようだ。
「君に聖剣の力が宿っている様子もないし、見たところこの剣も本当にダメになってしまっている。……君に力が宿っていればぶんどれたのになぁ」
 ぼそりと付け足された不穏な言葉にミモザはぶるりと震えた。それに気づいてか気づかずにか、彼はにこりとミモザに笑いかける。
「この聖剣にはかつて女神が実体を持っていた頃に彼女が封印した邪悪な精霊が封じられていたと言われているんだ」
「えっ」
 ミモザは思わず食べる手を止める。
「解放されるって言われましたよ」
 もしかしなくともまずいのでは。冷や汗をかくミモザにエオは苦笑した。
「ああ、心配には及ばないよ。精霊の肉体はもう滅びてるから。復活はできないさ。解放とは魂の消滅のことだろう」
「は、はぁ、なら良いのですがアントシアニンの効果……」
 よく知らずに手を出すものではないな、と反省する。一歩間違えば大災害だ。
「異空間を作るために聖剣の魔力を転用していたのだとしたら、その消滅と共に異空間が消えても不思議じゃない」
 そう言った後で、エオは感心したようにミモザを見た。
「消滅しなくて良かったね」
「え」
「異空間と一緒に消し飛んでもおかしくなかったと思うよ」
「…………」
 本当に迂闊なことはするものではないな、とミモザは猛省した。

 ロランと一緒に鍋を片付けて、ミモザは大きく伸びをした。これからまた泳いで祝福を手に入れに行かなければならない。エオが壊れた聖剣をいじっているのが視界に入った。
「聖剣欲しかったなぁ」
 思わずつぶやく。するとエオが顔を上げた。
「そうだね、じゃあ試してみるかい?」
「え?」
 返答が返ってきただけでも驚きなのに、さらに予想外のことを言われてミモザは目を見張る。そんな彼女にエオは面白がるように笑いかけた。
「いにしえから伝わるおまじないでね、力を得ることができるらしい。よければ教えてあげよう」
「…………」
 ミモザはごくり、と生唾を飲み込んだ。

 数刻後、ミモザはーー、
「力をー与えたまえー、力をー与えたまえー」
 藁人形に釘を打ちつけていた。
 頭には火のついた蝋燭を2本、ツノのようにくくりつけ、顔にはべっとりと赤い染料を塗っている。
「がんばれーがんばれー」
 エオはその後ろで自分の杖にハンカチをくくりつけ、旗のようにして笑顔で振っていた。
「大丈夫なのか? あれ」
 ロランはドン引きした顔で遠巻きに眺めている。
「……はっ亜鉛 サプリ おすすめ!」
 その時ミモザは天啓を得た。
「できる! 気がする!!」
 ミモザは近くで眺めていたチロへと手を伸ばす。チロは嫌そうにミモザへと近づくとメイスへと姿を変えた。
「はぁあ……っ!」
 気合いを入れてメイスを振る。
 するとそこにぼわん、と黒い煙のようなものが、球状にわだかまって現れた。
 それはミモザの全身と同じくらいの直径の球体だった。黒い煙は濃く深く薄まることがなく、そこにただぼんやりと浮かんでいる。
「は? 本当に効くのか」
 それに顔を引き攣らせてにロランは言う。
「いや、まさか」
 それをこともなげにエオは否定した。
「は?」
「プラシーボ効果ってすごいねぇ」
 プラシーボ効果。つまり、思い込み効果ということである。
「おまえ……」
「さてさて、どんな具合かな」
 ロランの非難の視線を避けるようにエオはその黒い塊へと近づくと「ふむ」と一つ頷いた。
「……大丈夫なのか。こんな得体の知れないもんに近づいて」
 ロランも恐る恐るといった様子で近づく。それにエオは気づいて場所を譲るように移動するとロランの背後へと回り、
「ちょっと試してみなよ」
 とその背中を押した。
「どわっ!!」
 ロランはその黒い煙へと全身を突っ込む。
「な、何も見えん! 何をするんじゃっ!!」
「まぁまぁ、死にはしなそうだから」
 ロランは慌てて煙の中から飛び出してくる。そしてむず痒そうに手足をばたつかせた。
「あーなんか、ピリピリするのう。別に動くのには支障はないが、なんじゃろうな、これは」
 むむぅ、と唸る。
「ちょっと体が痺れた時のようなピリピリ感と、激しい運動をした後に長風呂から上がったあとのような倦怠感もあるのぅ」
「なんか心地よさそうだね」
「いや、なんかちょっとのぼせた後みたdha epa dhaいな感じじゃ」
「あー、地味にだるくて嫌なやつだ」
「そんな感じじゃ」
「……もうやめてもらえませんかね」
 二人のやりとりをミモザは力無く遮る。どうやらこの黒い煙はミモザの二種類の毒をミックスした効果があるようだ。
 逆に言えばそれだけである。
 ミモザの精神力のHPはもうゼロに近かった。
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